「日本ボクシング専門ブログ:聖龍拳」

懐かし系の試合を中心に日本ボクシングを紹介するブログ。映像を見た感想を書いています。

令和のボクシング⑥(東京・両国国技館:田中恒成、中谷潤人、井上拓真)

「日本ボクシング専門ブログ:聖龍拳」「田中恒成 vs. クリスチャン・バカセグア」「アレハンドロ・サンティアゴ vs. 中谷潤人」「井上拓真 vs. ヘルウィン・アンカハス」を紹介します。

田中恒成 12R 判定 クリスチャン・バカセグア
WBO世界スーパーフライ級王座決定戦、2024年)
(ダウンシーン)
8R:連打でバカセグアがスタンディングダウン
(感想:田中が四階級制覇。これまで19勝(11KO)1敗の田中(WBO1位)。WBOミニマム級ライトフライ級、フライ級王座を獲得してきた三冠王。四階級制覇を狙って井岡一翔WBO世界スーパーフライ級王座に挑戦したが、攻めすぎて逆にKO負け。改めて四つ目のベルトを狙う。バカセグア(WBO2位)はメキシカンで22勝(9KO)4敗2分。ニックネームは「Rocky」。NABO王座(フライ級)に挑戦したときは判定負け。WBOの地域王座(スーパーフライ級)を決定戦で獲得、防衛。このところ連勝中で、初の世界挑戦。中谷潤人が返上した王座の決定戦。試合地は東京・両国国技館。共にガードを上げてリズミカルな動きからジャブ、右ストレート。バカセグアはなかなか思い切りのいいボクシングをする男。パワーを込めてワンツー、左ボディ打ち、右フックからの左フック。右ストレートからの左ジャブといったテクニックも使う。田中はディフェンス(ダッキングブロッキング)、パンチの正確さで勝負。5R、バッティングでバカセグアが負傷。田中は右ボディフックに良さ。その後も田中は機敏な動き。8Rには連打でバカセグアにスタンディングカウントを聞かせ、11R、12Rには右ストレートで優勢。12R終了。判定は3-0。試合運びが上手くなった田中。井岡戦にように闇雲に突っ込むのではなく、しっかり距離を取って正確な攻撃。接近戦でも良いパンチを打っていた。バカセグアも悪くはなかった。パンチの振りが大きいため隙があったが、世界王座を狙う選手にふさわしい積極さがあった。パンチの精度を上げれば世界王座獲得の可能性もあると思われる。)

中谷潤人 6R TKO アレハンドロ・サンティアゴ
WBC世界バンタム級タイトル戦、2024年)
(ダウンシーン)
6R:左ストレート、右フックで2度、サンティアゴがダウン
(感想:中谷が三階級制覇。これまで26戦全勝(19KO)の中谷(WBC1位)。WBO世界フライ級王座、WBO世界スーパーフライ級王座に次ぐ三つ目の王座を狙う。王者サンティアゴは28勝(14KO)3敗5分のメキシカン。IBF世界スーパーフライ級王座に挑戦したときは引き分けで王座獲得ならず。ラスベガスでノニト・ドネアとWBC世界バンタム級王座決定戦を行い、判定勝ちで王座獲得。中谷戦は初防衛戦となる。東京・両国国技館での一戦。髪を金髪に染めてヒゲが黒いサンティアゴ。中谷は広告でいっぱいのトランクス。ゴング。サウスポーの中谷。相手を警戒しながら距離を取って右ジャブ、左ストレート。サンティアゴは右ストレートを狙う。中谷がポイントを取る展開。サンティアゴはサウスポーが苦手なのか上手く攻められず、攻撃が単発に終わる。5R、中谷がボディ連打からの左ストレート。6R、左ストレートでサンティアゴがダウン。立ったが、右フックで二度目。今度も立ったが、レフェリーストップ。中谷が快勝。パンチは軽いが、当てる巧さがあった。サンティアゴは正直なところイマイチな世界王者。右パンチに威力がありそうだったが、攻めが単調で攻撃のバリエーションが少なすぎた。)

井上拓真 9R KO ヘルウィン・アンカハス
WBA世界バンタム級タイトル戦、2024年)
(ダウンシーン)
9R:右ボディフックでアンカハスがダウン
(感想:井上がタイトル初防衛。これまで18勝(4KO)1敗の王者井上(井上尚弥の弟であることは説明不要)。決定戦でWBA王座を獲得し、これが初防衛戦。WBA9位の挑戦者アンカハスはフィリピンのサウスポー。34勝(23KO)3敗2分。IBF世界スーパーフライ級王座を獲得して9度の防衛に成功したが、10度目の防衛戦で判定負け、王座陥落。リマッチにも敗れ、王座奪回ならず。階級を上げて井上に挑戦。東京・両国国技館での一戦。井上がリング入場。兄尚弥がWBAベルトを掲げ、セコンドには父真吾、付き添いで大橋秀行会長。ゴング。基本形が兄尚弥に似ている井上。ガードを高めに上げてジャブ。アンカハスもジャブ。互いに警戒し、ディフェンス。中間距離でストレートを狙う。ワンツー、左フックにパワーがある井上。アンカハスは踏み込んでのワンツーに威力。3R、井上の右カウンターがヒット。接近戦。互いにボディ打ち。打撃戦が続く中、8Rに井上の左フックがクリーンヒット。9R、打ち合い。右ボディでアンカハスがダウン。ヒザをキャンバスに着いたままカウントアウト。井上が力強い勝利。これまで世界戦では全て判定決着だったが、初めてのKO。元々パワーがあるため、倒すコツをつかんだら面白い存在になるだろう(WBC王者中谷との統一戦に期待)。アンカハスは左パンチにパワー。しかし、「フィリピン人はボディが弱い」という定説を覆すことはできなかった。)

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令和のボクシング⑤(ユーリ阿久井政悟、那須川天心、寺地拳四朗)

「日本ボクシング専門ブログ:聖龍拳」「ユーリ阿久井政悟 vs. アルテム・ダラキアン」「那須川天心 vs. ルイス・ロブレス」「寺地拳四朗 vs. カルロス・カニザレス」を紹介します。

ユーリ阿久井政悟 12R 判定 アルテム・ダラキアン
WBA世界フライ級タイトル戦、2024年)
(感想:阿久井がタイトル獲得。WBA1位の挑戦者、阿久井(28歳)はこれまで18勝(11KO)2敗1分。本名は「阿久井政悟」。あのユーリ・アルバチャコフに顔が似ているということからリングネームに「ユーリ」を借用。普通、そういう場合は「ユーリ阿久井」とか「ユーリ政悟」などと付けると思うが、「ユーリ+フルネーム」という珍しさ。中谷潤人に敗れて初黒星。その後、決定戦で日本フライ級王座を獲得して三度の防衛成功。このところ連勝中で初の世界挑戦。王者アルテム・ダラキアン(36歳)はウクライナの選手。アゼルバイジャン・バクー出身。これまで22戦全勝(15KO)。WBAのインター王座などを獲得、防衛後、決定戦でWBA王者に。これが七度目の防衛戦で、約一年ぶりの試合となる。エディオンアリーナ大阪での一戦(リングアナはジミー・レノン・ジュニア)。ナジーム・ハメドのようなトリッキータイプのダラキアン(顔立ちもハメド似)。左のガードを下げた構えから左ジャブ。距離を取りながら意表を突くかのようなタイミングで左フック。パワーが乗らない打ち方ではあるが、パンチにはキレがある。阿久井は基本的な正統派。ガードを上げてジャブ、右ストレート、左フック。アウトボクシングのダラキアン、前に出る阿久井。3Rにバッティング(試合前の記者会見でも)。打っては距離を取ったりクリンチしたりのダラキアン。阿久井は攻めるが、逃げられて単発に終わる。その流れで12R終了。判定は3-0。共に決定打を欠いたが、阿久井の攻める姿勢が評価されたか。試合後、ダラキアンは「(この敗北は)時の流れ(による自身の衰え)」と語ったが、この人は普段からこういう戦い方なのだと思われる。個人的にはパワーが乗らない打ち方をする選手は好みではない。ハメドに似た試合ぶりだったが、ハメドはトリッキーながら腕力もあった。一方の阿久井。世界王座を獲ったが、試合内容はそこそこ。これから王者としてどんな試合を見せるかで評価が決まりそう。顔もユーリには似ていない。「ユーリ」などという他人の名を使わずに本名のみで勝負するのが良いと思うがどうだろう?)

那須川天心 4R TKO ルイス・ロブレス
スーパーバンタム級8回戦、2024年)
(感想:那須川(帝拳)のプロボクシング三戦目。これまで二連勝だが、いずれも判定勝ち。今回は? ロブレスはメキシカンで15勝(5KO)2敗1分。直前の試合ではWBCの地域王座(バンタム級)に挑戦してドロー。まだ、王座を獲ったことがない。エディオンアリーナ大阪での一戦(那須川のセコンドには世界二階級制覇のサウスポー、粟生隆寛)。慎重に足で距離を取って右ストレートを狙うロブレス。那須川はフットワークは少な目で右ジャブ。そして踏み込んで左ストレート、左ボディ打ち。ロブレスは右パンチに力を込めるが単発で空転。那須川も強いパンチを打っているが単発でフォローのパンチが無い。攻めの姿勢で那須川が優勢。3R終了後にロブレスが棄権。右足を痛めたらしい(特に足を痛めるようなシーンは無かったように見えたが)。那須川が追い込む姿勢で勝利。しかし、攻撃が単発。ファンが期待しているような「ダウンを奪ってのKO勝ち」ではなかった。強いパンチを交えたコンビネーションを使えるようになるにはまだまだ練習、経験が必要と思われる。)

寺地拳四朗 12R 判定 カルロス・カニザレス
WBAWBC世界ライトフライ級タイトル戦、2024年)
(ダウンシーン)
2R:右フックでカニザレスがダウン
3R:右ストレートで寺地がダウン
(感想:寺地がタイトル防衛。これまで22勝(14KO)1敗の統一王者、寺地(32歳)。挑戦者カニザレス(30歳)はベネズエラの選手で元WBA王者。田口良一、小西伶弥と日本で試合をしたことでその実力は日本でもおなじみ。26勝(19KO)1敗1分。王座陥落後はWBAの地域王座を獲得、防衛。直前の試合は「WBA王座挑戦者決定戦」として行われ、負傷判定勝ち。エディオンアリーナ大阪での一戦。いつものようにジャブから入る寺地。カニザレスはガードを上げてジャブ。右に自信があるらしく思い切った右ストレート。ショートの左フックにもパワー。共に機敏な動きでディフェンス(ブロック、ダッキング)。2R、右フックでカニザレスがダウン(倒れまいと頑張ったカニザレス。寺地を押し倒して一緒に転倒)。攻める寺地。カニザレスは距離を取る。3R、左フックを食った寺地。右ストレートでダウン。これでカニザレスの自信が回復。その後、中間距離で打ち合いが続く。互いのパンチがヒット。寺地は隙を突く巧さ、カニザレスはパワー。7R、右を打たれてのけぞる寺地だが、ボディ打ちで反撃。終盤、右パンチで攻めるカニザレス。寺地は足を使ってアウトボクシング。12R終了。カニザレスがセコンドにかつがれ、両手を上げて自身の勝利を確信。判定は極めて僅差の2-0。なかなか厳しい防衛戦となった寺地。パワーでは負けていたが、当てる巧さ、攻撃のバリエーションの多さでわずかに上回った。カニザレスは打たれても打ち返すなど強かったが、やや受け身。自分から試合をリードするような試合運びをしていたら勝っていたかも。再戦の可能性もありそうだが、寺地は興味ないらしい。)

辰吉寿以輝 8R 判定 与那覇勇気
スーパーバンタム級8回戦、2024年)
(感想:辰吉丈一郎の次男、寿以輝。プロデビュー以来、14勝(10KO)1分。負け無しであるが王座戦の経験はまだ無し。コブシも痛めているらしい。沖縄出身の与那覇は13勝(8KO)5敗1分で、日本バンタム級10位。コチラもまだ王座戦の経験無し。「那須川天心のデビュー戦の相手」として知られている。エディオンアリーナ大阪での一戦(会場では辰吉夫妻が観戦)。似たタイプの二人。ジャブ、右ストレート、左フック。共にジャブ、ストレートに良さ。しかしながら、辰吉には真っ直ぐ攻めるクセがあり、ディフェンスに隙がある。左フックは腰が入っておらず、手打ち気味。与那覇は攻めるときは攻め、守るときはブロックに専念する「攻防分離」型。辰吉が手数でやや優勢。4Rには連打を見せる。与那覇は左ボディ打ちに強さがあり、当たらないが右アッパーには迫力がある。8R終了。判定は僅差の2-0。辰吉は何らかのタイトルが欲しいようだが、左フックを改善しない限りそれは難しそう。与那覇は攻めながら防御するテクニックが必要だろう。)

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懐かしの試合「ミッキー・ローク vs. ダリル・ミラー」

1992年6月に日本で行われた試合。映画俳優がプロボクシングでどんな試合を見せるのか、が注目された。その内容を振り返ります。「日本ボクシング専門ブログ:聖龍拳」

ミッキー・ローク 1R KO ダリル・ミラー
スーパーミドル級戦、1992年)

(ダウンシーン)
1R:右ストレートでミラーがダウン
(感想:映画スター、ミッキー・ローク。1980年代半ばに日本でも大人気。『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』『ナインハーフ』『エンゼル・ハート』が話題に。1988年にはボクシング映画『ホームボーイ』出演(アイラン・バークレーも出演)。「カッコいい色男」ローク(身長は180cm)。アマチュアの経験があるらしく、少年時代にバンタム級の試合で勝ったことがあるという。しかし、ダメージを懸念して、ボクシングから引退。スターになってから異例のチャレンジ。フレディ・ローチの指導を受け、プロのリングへ。これまで1勝1分(この二試合は大凡戦だったとか)。1992年6月23日、両国国技館で「ダリル・ミラー」なる選手と対戦(WBC世界フライ級王座戦「ムアンチャイ・キティカセム vs. ユーリ海老原」が行われた興行)。36歳のミラーはネブラスカ州オマハの選手。「ネブラスカ州王者」ということだが、「BOXREC」には王座を獲得した記録がない。記録を見ると、リンデル・ホームズ(後、IBF世界スーパーミドル級王者に)にTKO負けするなど負けが多い。このところハロルド・ブレージャー、バック・スミスにKOされるなど連敗中。両選手リング入場。共に後頭部の髪を伸ばして束ねている。「長さ」ではミラーの勝ち。ミラーが赤のトランクス、ロークは大阪のおばちゃんスタイル(ヒョウ柄)。共に白のグローブ。アップライトスタイルのローク。ジャブを連打。サウスポーにスイッチしてボディ連打。悪くはないが、ディフェンスに隙がある。ミラーはジャブ、大振りのフック攻撃。そして、ロークがジャブ連打からの右ストレート(チョッピング・ライト)。ダウンしたミラーは立てず、KO。勝ったロークにスポンサー(?)が日本人形をプレゼント(なぜ日本人形? 『プロレス・スーパースター列伝』のアブドーラ・ザ・ブッチャー編を思い出させる)。ロークが快勝。最後のパンチは「手首を使った」とのこと。作戦が上手くいってよかった、といったところ。この試合に関しては「八百長」を疑う者もいるが、それはないと思いたい。その後の二人。ミラーはブレージャーにまたしてもKO負け(ローカル王座戦)。通算戦績は12勝(3KO)47敗5分だった。ロークは結局、1991年~1994年に四回戦のみで、6勝(5KO)2分。敗北は無し。しかしながら、「顔」が売り物の役者にはエラいダメージ。整形手術が必要になったほど顔を損傷。ローク「鼻を2回骨折。鼻の手術は5回、頬骨の粉砕は1回」。ロークのボクシング挑戦を揶揄する者もいるが、この話を聞いたら彼をバカにすることはできないだろう。2014年には62歳ながらロークはモスクワエキシビション・マッチ。プロでは大物と戦うことはなかったが、トーマス・ハーンズ、ジェームス・トニー、トミー・モリソン、ジョン・デヴィッド・ジャクソンといった有名選手とスパーリングをしたとか。)

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令和のボクシング④(中谷潤人、那須川天心、寺地拳四朗)

「日本ボクシング専門ブログ:聖龍拳」有明での興行。「中谷潤人 vs. アルヒ・コルテス」「那須川天心 vs. ルイス・グスマン」「寺地拳四朗 vs. ヘッキー・ブドラー」を紹介します。

中谷潤人 12R 判定 アルヒ・コルテス
WBO世界スーパーフライ級タイトル戦、2023年)
(ダウンシーン)
5R:左ボディ、右ボディで2度、コルテスがダウン
9R:連打でコルテスがダウン
(感想:中谷がタイトル初防衛。アンドリュー・モロニー(オーストラリア)を強烈なKOで下してWBO王座を獲得した中谷(25歳。これまで25戦全勝(20KO))。これが初防衛戦。挑戦者コルテス(28歳。25勝(10KO)3敗2分)はメキシカン。ファン・フランシスコ・エストラーダ相手に12Rフルに戦ったことがある。これが初の王座戦。東京・有明アリーナでの一戦。リングアナはジミー・レノン・ジュニア。サウスポーの中谷。前傾姿勢で右ジャブ、左ストレート。かつての世界ミドル級王者マイケル・ナンに似たスタイル。コルテスは左を使いながら右を当てようと狙う。右ストレートからの左ジャブといったテクニックを持っているが、動き自体は速くない。左ストレートを当てる中谷。コルテスはパンチを打ち終わった後のバランスが悪いため、畳み掛けるような連打ができない。5R、左ボディでコルテスがダウン。さらに右ボディで二度目のダウン。6Rに右パンチを当てたコルテスだが、9Rにも左ボディが効いてダウン。12R、中谷がスリーパーホールド(プロレス技)、そしてワンツー連打。12R終了。判定は3-0。中谷がサウスポーのテクニックで勝利。パワーはそこそこだったが、左ストレート、左ボディ打ちが良かった印象。ただ、コルテスは微妙なチャレンジャー。世界を獲るには器用さに欠け、攻撃が単発だった。)

那須川天心 8R 判定 ルイス・グスマン
スーパーバンタム級戦、2023年)
(ダウンシーン)
1R:左カウンターでグスマンがダウン
7R:右ショートでグスマンがダウン
8R:左ストレートでグスマンがダウン
(感想:那須川(25歳)のプロボクシング二戦目。相手はメキシコ・バンタム級王者グスマン(27歳)。層が厚いメキシコのバンタム級。その王者となると相当な実力者に違いない。これまで10勝(6KO)2敗。ただし、本人によるとこの記録に入っていない試合もあるとか(メキシコの草試合のことと思われる)。この試合のレフェリーはビニー・マーチン(元ミドル級選手)。那須川のセコンドには元世界二階級王者の粟生隆寛。サウスポーの那須川。ガードを上げて速い右ジャブ。グスマンもガードを上げて左ジャブ。速い左カウンターでグスマンがダウン。その後、共にフットワークは少な目でストレートを狙う。右を当てようとするグスマンだが、フックは振りが大きく不正確。那須川はディフェンス(首を振ってパンチをかわすテクニックも披露)しながらワンツー、連打、カウンターで左ボディ打ち。デビュー戦と同様、インターバルのときに座らない。7R、相手の動きを止めたいのかグスマンが那須川の足を踏む(反則)。そして右を当てるのに成功。しかし、右ショートを当てられてグスマンがダウン。8R、オーソドックスにチェンジして那須川が右ストレート。試合終了間際、左ストレートでグスマンがダウン。8R終了。判定は3-0。那須川がキレのある動きで勝利。ボディをカウンターで打つなどタイミングを捉えるのが巧い印象。ただ、この選手はファイタータイプではなくボクサータイプ。戦いぶりが亀田興毅に似ている。打ち合いを避けながらカウンターを取るスタイルでこのまま上位クラスを狙うのだろうか? 個人的にはジャブをパワーアップするのが望ましいと思う。グスマンは残念。攻撃の正確さに欠けた。強い挑戦者にメキシコ王座を奪われるのは時間の問題なのでは?)

寺地拳四朗 9R TKO ヘッキー・ブドラー
WBAWBC世界ライトフライ級タイトル戦、2023年)
(感想:寺地がタイトル防衛。これまで21勝(13KO)1敗の王者、寺地。かつての名王者、柳明佑に似たスタイル。一度、WBC王座を不本意な形で失ったが、奪回。京口紘人のWBA王座を吸収して統一王者に。「小さな巨人」といっても良いレベルの実力。挑戦者ブドラーは南アフリカ共和国の白人。WBA4位、WBC1位で35勝(11KO)4敗。ニックネームは「The Hexecutioner(死刑執行人)」。決定戦でWBA世界ミニマム級暫定王座を獲得。その王座は後に正規王座、スーパー王座に格上げ。田口良一からWBAIBF世界ライトフライ級王座奪取。IBF王座を返上。京口に敗れ、WBA王座陥落。ブランク後、再起三連勝でこの寺地戦。王座奪回なるか、といったところ。両選手入場。寺地はWBAWBCのベルト。ブドラーは派手なトランクス、上半身にはたくさんの水墨画。共にガードを上げてリズミカルな動き。ブドラーが左フックからの右ストレートといったコンビネーション。寺地はいつものようにまずはジャブから。そしてディフェンスしながら相手のガードの隙を突く右カウンター、ボディ打ち。手数が多い打撃戦。互いに機敏な動きを見せるが、当てるテクニックは寺地が若干上か? 5R、バッティングで寺地が右マブタから出血。一進一退の中、9Rに寺地がラッシュ。ブドラーがロープ際で連打されたところでレフェリーストップ。スピーディだった試合。ブドラーのジャブ、ストレートがヒットするシーンもあったが、寺地がディフェンスと隙を突くパンチで勝利。最早、普通の選手では寺地とは勝負にならない。寺地を一撃で仕留めるようなパワーのある選手、またはパンチを当てさせない厄介なタイプの選手でないと寺地から王座を奪うのは難しいだろう。)


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「正確なカウンターパンチ」井岡一翔⑨

四階級制覇王者。世界S・フライ級王座戦「vs. ドニー・ニエテス(再戦)」「vs. ジョシュア・フランコ(初戦・再戦)」を紹介します。「日本ボクシング専門ブログ:聖龍拳」

井岡一翔 12R 判定 ドニー・ニエテス
WBO世界スーパーフライ級タイトル戦、2022年)
(感想:井岡がタイトル防衛。井岡(28勝(15KO)2敗)の五度目の防衛戦であり、因縁の再戦(初戦はニエテスが微妙な勝利。実に地味な勝ち方だった)。WBO1位のニエテスはフィリピンの選手。これまで43勝(23KO)1敗6分で、18年間負け無し。ただし、年齢は40歳で勢いがある状況ではない。共にガードを上げてジャブ。井岡はワンツーからの左ボディといったコンビネーション。ニエテスは動きはそれほど速くはないが、ジャブが正確で右ストレートがパワフル。しかし、次第にニエテスが受け身の姿勢に。連打する井岡、時折反撃するニエテス、といった感じの展開で12R終了。判定は大差の3-0。井岡が細かい連打、手数で勝利。力強いパンチを打っていたニエテスだが、なぜか自分からはあまり攻めなかった。攻めないのであればタイトルに挑戦しても無駄というもの。40歳の選手に期待する方が間違いだったか。)

井岡一翔 12R 引分 ジョシュア・フランコ
WBAWBO世界スーパーフライ級王座統一戦、2022年)
(感想:両者タイトル防衛。TBS年末恒例の井岡戦(会場ではWBC王者のフアン・フランシスコ・エストラーダが観戦)。WBO王者の井岡がWBA王者フランコアメリカ)と統一戦。これまで18勝(8KO)1敗2分1NCのフランコは「El Profesor(教授)」と呼ばれる男(なぜ「教授」?)。弟ジェシー・ロドリゲス(兄弟で名前が違う)もWBC世界スーパーフライ級王座獲得(後、返上)している「ボクシング兄弟」。アンドリュー・モロニーから王座を獲得。モロニーとの再戦はノーコンテスト。三戦目は判定勝ち。そしてこの井岡戦。似たタイプの井岡とフランコ。共にジャブ連打、ブロック。ワンツーからの左フックなどで攻める姿勢のフランコ。井岡は右フック、左ボディ打ちで応戦。接近戦では互いに手数が多いが、一発で倒すようなパワーはない。最終ラウンド終了時には共に手を上げて自身の勝利をアピール。引き分け。井岡は相手の隙を突くのは巧かったが、受け身の姿勢。フランコはよく前に出たがワンパターンで、攻撃をブロックされるシーンが多かった。)

井岡一翔 12R 判定 ジョシュア・フランコ
WBA世界スーパーフライ級王座決定戦、2023年)
(感想:井岡がタイトル獲得。再戦。何かと話題が多く、悪い意味で歴史に残る試合。井岡が「大麻使用」の疑い。フランコは体重超過で王座剥奪。試合前、井岡は自身の潔白を訴え、相手の体重は気にしない、と主張。初戦と同じ東京・大田区総合体育館での一戦。共にガードを上げて接近戦。井岡が右カウンター、左ボディ打ちを決める。そして、フランコの攻撃をブロック。12R終了。判定は3-0。井岡が勝利。コンディションが悪い相手をKOできなかったのが少し残念。軽量級での体重差はやはり大きな影響があったか。フランコは精神的な問題を試合前から抱えていたらしい。引退を表明しているが、その通りになるかどうか。井岡はWBO王者・中谷潤人(井岡が返上した王座をKOで獲得、二階級制覇)との対戦が望まれる。)

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令和のボクシング③(佐々木尽、小原佳太、那須川天心、中谷潤人)

「日本ボクシング専門ブログ:聖龍拳」「佐々木尽 vs. 小原佳太」「那須川天心 vs. 与那覇勇気」、WBO世界Sフライ級王座戦「中谷潤人 vs. アンドリュー・マロニー」を紹介します。

佐々木尽 3R KO 小原佳太
WBOアジアパシフィック・ウェルター級タイトル戦、2023年)

(ダウンシーン)
2R:右ストレートで佐々木がダウン
3R:左ボディ、右ストレートで2度、小原がダウン
(感想:佐々木がタイトル防衛。王者の佐々木。これまで14勝(13KO)1敗1分。WBOアジア・スーパーライト級王座はTKO負けで獲れなかったが、ウェルター級王座を獲得。これが初防衛戦。挑戦者の小原はベテラン。日本王座、東洋太平洋王座(いずれもスーパーライト級)、WBOアジアパシフィック・ウェルター級王座などを獲得。IBFの世界王座に挑戦したこともある(TKO負け)。かつて持っていた王座を奪回できるかどうか? 世界ランカー同士の一戦(佐々木はWBO11位、小原は8位)。個性的な佐々木。左のガードを下げてジャブを打ったり、「ピタッ」と動きを止めたりしながら相手を挑発する。小原はアップライトスタイルからジャブ、右ストレート、左フック。パワーはそこそこだが、パンチにキレがある。パワーを込めてフック攻撃の佐々木だが、2R、右ストレートを食ってダウン。それでも攻める佐々木。3R、左ボディで小原がうずくまるダウン。再開後、右ストレートで二度目のダウン、KO。佐々木が豪快なKO防衛。ディフェンスに甘さを見せたが、パワーは世界レベルだった。一方、痛烈なKO負けだった小原。パンチはシャープで良かったが、よけそこなって打たれた。アップライトスタイルは欠点が大きい。)

那須川天心 6R 判定 与那覇勇気
スーパーバンタム級戦、2023年)

(ダウンシーン)
2R:右フックで与那覇がダウン
(感想:キックボクサーの那須川がプロボクシングデビュー戦。相手は日本バンタム級2位の与那覇(12勝(8KO)4敗)。ジャブで前進し、右ストレート、フックの与那覇。サウスポーの那須川は距離を取って右ジャブ、ワンツー、左ボディ。コンビネーションを使う那須川。2R、右フックカウンターでダウンを奪う。その後、前に出てくる与那覇の攻撃をブロックしながら那須川が左カウンター。6R終了。判定は3-0。那須川が当てるテクニック&ディフェンスで勝利。個人的に那須川には気になる点がいくつか。ジャブが軽かった印象。相手の攻めを止められなかったのはそれが原因と思われる。左フックの振りが大きいのも気になった。相手がカウンターを得意とする選手だったら打たれていたかもしれない。インターバル中に座らないのもあまりよろしくない。余裕があるときはそれでもいいかもしれないが、きつくなってきたらどうするのか? ジョージ・フォアマンは太っていたため「立ったり座ったりするのがしんどい」という理由で座らなかったが、疲れてきたときには座っていた。相手に弱味を見せないようにするのも勝負事には必要。)

中谷潤人 12R KO アンドリュー・マロニー
WBO世界スーパーフライ級王座決定戦、2023年)

(ダウンシーン)
2R:右フックでマロニーがダウン
11R:ワンツーでマロニーがダウン
12R:左カウンターでマロニーがダウン
(感想:中谷が二階級制覇。決定戦で手に入れたフライ級王座を返上した中谷。これまで24戦全勝(18KO)。またしても決定戦で二つ目のベルトを狙う(この王座は井岡一翔が返上したもの)。マロニー(オーストラリア)は元WBA王者。WBA世界スーパーフライ級暫定王座を決定戦で獲得し、正規王者に昇格した経緯がある。双子の兄弟ジェイソンもボクサーで、井上尚弥WBAIBF世界バンタム級王座に挑戦してKOされたことがある。ネバダ州ラスベガス「MGMグランドアリーナ」での一戦(世界ライト級タイトルマッチ「デビン・ヘイニー vs. ワシル・ロマチェンコ」のアンダーカード。ヘイニーが王座防衛)。気合いの入った表情のマロニー。ブロックしながら前進し、右パンチ、左ボディ打ちを出す。サウスポーの中谷は距離を取りながら右ジャブ、左ストレート。接近戦を挑むマロニー。しかし、2Rにフック連打からの右フックを食らってダウン。3R、中谷がバッティングで出血。よく前に出るマロニーだが、中谷はブロック、クリンチ。逆に中谷が左ストレートカウンター、アッパー気味の左右フックで優勢。11R、ワンツーでマロニーがダウン。12R終了近く、中谷の左カウンターでマロニーがダウン。倒れると同時にレフェリーは試合を止めた。中谷がスピード&ディフェンスで快勝。一発一発のパンチは軽いが、カウンターを取る巧さ、斜め下からのフック連打に強さがあった。本場アメリカで実力を発揮。これからは「名のある相手」を中心にリングに上がっていくことになるはず。マロニーは右ストレート、左ボディ打ちが良かったがブロックされた末、痛烈なKO負け。病院送りになってしまった。)

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令和のボクシング②(谷口将隆、井上拓真、寺地拳四朗)

「日本ボクシング専門ブログ:聖龍拳」世界王座戦「谷口将隆 vs. ジーメル・マグラモ」「井上拓真 vs. リボリオ・ソリス」「寺地拳四朗 vs. アンソニー・オラスクアガ」を紹介します。

メルビン・ジェルサエム 2R KO 谷口将隆
WBO世界ミニマム級タイトル戦、2023年)

(ダウンシーン)
2R:ワンツーで谷口がダウン
(感想:ジェルサエムがタイトル獲得。王者の谷口は二度目の挑戦で同王座を獲得。これが二度目の防衛戦。挑戦者ジェルサエムはフィリピン人。ガッチリ型の体型で、東洋太平洋ミニマム級王座を獲得した実績。WBC王座に挑戦したことがあるが、そのときは判定負け。これが二度目の世界挑戦。サウスポーの谷口が左ストレートで攻める。ジェルサエムは距離を取りながらフットワーク。ジャブ、右フックで応戦。左パンチに自信がありそうな攻めを見せる谷口だが、ジャブは軽めの印象。2R、左ジャブからの右ストレートで谷口がダウン。立ったが足に来ており、再びダウン。KO。攻めの姿勢だった谷口が一瞬の隙を突かれてKO負け。ジャブで相手をもっと追い込んでから攻めに行くべきだったのではないだろうか? 勝ったジェルサエム。なかなかいいパンチを持っていた。)

井上拓真 12R 判定 リボリオ・ソリス
WBA世界バンタム級王座決定戦、2023年)

(感想:井上がタイトル獲得。井上尚弥が返上した王座を元WBC暫定王者の弟拓真が狙った試合。井上はこれまで17勝(4KO)1敗(27歳)。ソリス(ベネズエラ)は元WBA世界スーパーフライ級王者で35勝(16KO)6敗1分1NC。 亀田大毅との試合でのゴタゴタ、山中慎介から強打でダウンを奪ったシーンでおなじみの選手だが、年齢はもう41歳。どんな動きを見せるか? リングアナはジミー・レノン・ジュニア。前王者井上尚弥がリングサイドで観戦。共にジャブ、右ストレート。ソリスは41歳とは思えないほど動きが良い。しかし、接近戦ではクリンチされてしまう。5R、ヒジ打ちで井上が負傷。その後、井上がディフェンス、右カウンター、ショート連打。互いに決定打を欠く状況で12R終了。判定は3-0。井上の右が評価されたか。最後まで前に出たソリスはなかなか力強かったが、パンチを当てさせてもらえず。井上は兄尚弥とは違って隙を突いてポイントを取るスタイルを定番にしたようだ。) 

寺地拳四朗 9R TKO アンソニー・オラスクアガ
WBAWBC世界ライトフライ級タイトル戦、2023年)

(ダウンシーン)
3R:右ボディでオラスクアガがダウン
9R:連打でオラスクアガがダウン
(感想:寺地がタイトル防衛。統一王者の寺地。当初はWBO王者と対戦予定だったが、キャンセル。オラスクアガと通常の防衛戦。オラスクアガはアメリカ・ロサンゼルス出身の選手。試合経験は少ないがWBAの地域王座(フライ級)を獲得しており、挑戦資格アリ。いつものように動きがリズミカルな寺地。左を使いながら距離を取って相手の隙を突く。ピンクのオシャレなトランクスのオラスクアガはジャブ、前進してフック攻撃。3R、右ボディでオラスクアガがダウン。その後、寺地はボディ狙い。オラスクアガはボディが効いて、クリンチ。9R、連打でオラスクアガがダウン、レフェリーストップ。寺地が当てるテクニック、ディフェンスで快勝。安定した強さ&巧さを見せた。オラスクアガはパワーのあるワンツー、フックを打っていたが単発。攻めるリズムが良くなかった印象。世界を獲るにはテンポ良くコンビネーションする必要がある。)

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