WBC世界バンタム級王者。具志堅の防衛記録に迫る山中。メキシコが送り込んだ刺客との防衛戦「vs. カルロス・カールソン」「vs. ルイス・ネリ（初戦・再戦）」を紹介します。「日本ボクシング専門ブログ：聖龍拳」
①山中慎介 7R TKO カルロス・カールソン
（WBC世界バンタム級タイトル戦、2017年）
（ダウンシーン）
5R：左ストレート、連打で２度、カールソンがダウン
6R：左ストレートでカールソンがダウン
7R：連打、左ストレートで２度、カールソンがダウン
（感想：山中がタイトル防衛。12度目の防衛戦。メキシカンのカールソン。デビュー戦で敗北してしまったが、それ以降は全勝。WBCの地域王座、北米王座（いずれもバンタム級）を獲得している。ガードを上げて上体を動かしながらジャブ、右ストレートを打ち込むカールソン。山中は距離を取って、ワンツーからの右フックなどのコンビネーション、左カウンター、左ボディストレート。接近戦では山中はクリンチ。2R、連打でカールソンが左目の下をカット。パンチのダメージも受ける。4Rには右ストレートを決めたカールソンだが、5R、左ストレートのカウンターでダウン。さらに連打で二度目。しかし、逆に左ジャブを食って山中がピンチ。クリンチでしのいだ山中が6R、7Rにもダウンを奪い、レフェリーストップ。五度ダウンを奪って山中が圧勝。具志堅用高の13連続防衛まであと一つのところまできた。カールソンは悪い選手ではなかったが、正直なボクシング。右ストレートは良かったが単発。右を打った後に左フックをフォローするなどの工夫があればよかった。山中戦後は負けが多くなり、世界王座を獲得することはできなかった。）
②ルイス・ネリ 4R TKO 山中慎介
（WBC世界バンタム級タイトル戦、2017年）
（感想：ネリがタイトル獲得。これまで27勝（19KO）2分の山中。13度目の防衛戦。勝てば具志堅の13連続防衛に並ぶ。WBC１位ネリは23戦全勝（17KO）のメキシカン。WBCの米大陸王座、シルバー王座（いずれもバンタム級）を獲得している実力者。ニックネームは「豹」。サウスポー同士の一戦。山中が速いジャブ、伸びる左ストレート。ネリはブロックやダッキングといったディフェンスのテクニックを使いながら、伸びのある左ストレート、パワフルな左右フック連打を振るう。3Rまでは山中がディフェンスしながら左カウンターを決めていたが、4Rにネリが一気に攻める。フック連打でロープ際まで追い込まれる山中。セコンドがリングインして試合終了。ネリが猛打で勝利。まるで映画『ロッキー3』で挑戦者のクラバー・ラングが10連続防衛王者ロッキーを滅多打ちにしたシーンのような猛攻だった。山中はラッシュされながらも何とかディフェンスしていたが、セコンドに止められた。過去のダメージが影響していたと思われる。ところがネリから禁止薬物に対する陽性反応が。ネリは違反などする必要がないほど良いパンチを持っていたが、それは薬物によるパワーだったのだろうか？ ボクシングは瞬発力だけではなく持久力も必要。ドーピングすれば本来の自分にはない凄いパワーが出るのかそうでないのかはわからないが、個人的にはネリは豪快なパンチを打つ強い男だと評価するし、この勝利は実力によるものだと思いたい。「ボクシング界は不正をしても認める」となると過去の名選手や名勝負も疑いの目で見られるようになってしまうため。）
③ルイス・ネリ 2R TKO 山中慎介
（WBC世界バンタム級タイトル戦、2018年）
（ダウンシーン）
1R：左ストレートで山中がダウン
2R：左ストレート、右ジャブ、右フックで３度、山中がダウン
（感想：因縁の再戦。ところがネリが計量に失敗。王座は空位に。山中が勝てば新王者、ネリは勝っても王座ナシ、という条件で行われることに。基本的な戦い方は前回と同じ。1R、シャープなジャブ、左ストレートの山中。ネリはパワーを込めてフック連打。左ストレートで山中がダウン。2Rにも左ストレートでダウン。かなり足に来ており、ジャブでダウン。最後は右フックで倒れ、同時にレフェリーストップ。勢い、パワーの差で勝負がついた。山中は元々アップライトな構え。相手の攻撃をかわせるうちはいいが、打たれて動きが止まると狙い打ちされてしまう。残念ながら実力による負け。ネリとは相性が悪かった。山中はこれを最後に引退してしまったが、ネリはその後、決定戦でWBC世界スーパーバンタム級王座獲得、二階級制覇。しかし、初防衛戦でKO負け、王座陥落。「お騒がせ男」として未だ現役続行中（2022年2月5日の試合が今のところ最後の試合）。）
